インフルエンザに対する漢方の予防策

こんにちは、宇都宮市の漢方相談・天明堂薬局の中山です。

今年は例年よりもインフルエンザの流行が早いみたいですね。
当店の身近な学校でも学級閉鎖が起こっているようです。

今回のブログは睡眠不足とインフルエンザの関係について、そしてお勧めの漢方薬について書いてみたいと思います。

睡眠不足と免疫力

現代医学では「免疫力の低下」が大きな要因とされますが、漢方の世界でも古くから「睡眠不足」が体を弱らせる原因として重視されてきました。特に、漢方独自の概念である「衛気(えき)」との関係は見逃せません。


衛気とは、体の表面を守る防御力のような存在です。
外から侵入してくる邪気――つまりウイルスや寒さ、湿気などの悪影響――を防ぐ盾の役割を果たします。
十分な睡眠は、この衛気を養うために欠かせないものです。
ところが睡眠不足が続くと、衛気が不足し、体の防御力が弱まってしまいます。その結果、インフルエンザや風邪にかかりやすくなるのです。


漢方では「夜更かしをしないこと」が養生の基本とされています。
夜は体が休息し、衛気を補う大切な時間です。夜更かしをすれば、衛気の生成が追いつかず、翌日の体調に影響します。現代の研究でも、睡眠不足が免疫細胞の働きを低下させることが報告されており、漢方の理論と科学的知見がここで重なります。

免疫力は胃腸を冷やさないことも重要

漢方では胃腸を「脾胃」と呼び、食べ物から気や血を生み出す源と考えます。
冷たい飲食物を摂りすぎると脾胃の働きが弱まり、衛気の生成が滞ります。
冬場に冷たい飲み物や生野菜を過剰に摂ることは、知らず知らずのうちに防御力を削いでしまう行為なのです。

また「暴飲暴食をしないこと」も忘れてはなりません。
食べすぎは胃腸に負担をかけ、消化不良を招きます。漢方では「食滞」と呼び、これが気血の巡りを妨げ、衛気の働きを阻害します。年末年始の宴席や飲み会が続く時期は特に注意が必要です。楽しむことは大切ですが、翌日の体調を守るためには「腹八分目」を心がけたいものです。

この時期の漢方薬は?

こうした養生に加えて、漢方薬の力を借りることも一つの方法です。
代表的なものに「衛益顆粒(えいえきかりゅう)」があります。これは黄耆(おうぎ)を主成分とする方剤で、衛気を補い、体の防御力を高める働きがあります。疲れやすい人、風邪をひきやすい人、季節の変わり目に体調を崩しやすい人に適しています。日常生活での養生と併せて取り入れることで、インフルエンザや風邪への抵抗力を底上げすることが期待できます。


もちろん、漢方薬は万能ではありません。基本は生活習慣の改善です。
夜更かしを控え、胃腸を冷やさず、暴飲暴食を避ける――この三つの柱を守ることが、衛気を充実させ、冬を健やかに過ごすための鍵となります。衛益顆粒はその補助として活用するのが理想的です。
現代社会では、仕事や学業、家庭の事情などで睡眠不足になりがちです。しかし、漢方の視点から見れば「眠ること」こそが最大の予防薬。薬やサプリメントに頼る前に、まずは眠りを整えることが大切です。夜の休息は、体を守る盾を磨く時間。衛気を養い、翌日の活力を生み出す源なのです。


この冬、インフルエンザや風邪から身を守るために――。

夜更かしを控え、胃腸を労わり、食事を節度あるものにする。そして必要に応じて漢方薬を取り入れる。そんな小さな心がけが、あなたの体を大きく守ってくれるでしょう。

中山 貴央

中山 貴央先生

  • 薬剤師
  • 国際中医専門員
  • 薬膳コーディネーター

子宝相談、婦人科相談、美容相談を専門としています。
唯一無二の自分の心と体、そして人生だからこそ根本から改善できる漢方を試していただきたいと思っています。