漢方から見る「眠り」と「夕食」の深い関係

こんにちは、宇都宮市の漢方相談・天明堂薬局の中山です。

不眠と聞くと何か大きな体質的なトラブルがありそうですが、実は生活習慣、特に夕食の内容が睡眠に悪影響を及ぼしていることもあります。

今回は夕食の内容と不眠の関係性について書いてみましょう。

体内の“熱”が眠りを妨げる

漢方では、体のバランスを「陰陽」や「気・血・水」の流れで捉えます。
眠りは「陰」の時間帯に訪れる自然な生理現象であり、体が静かに落ち着いていくことでスムーズに入眠できます。しかし、夕食の内容によってはこの「陰」の流れを乱し、「陽」が過剰に働いてしまうことがあります。
特に注意したいのが、香辛料の強い料理や揚げ物。唐辛子やニンニクなどの刺激物は体内に「熱」を生み出し、揚げ物は消化に負担をかけることで「湿」を生じさせます。これらはどちらも体を興奮状態に導き、心身が休まるべき夜に「陽」が優位になってしまうのです。その結果、布団に入っても頭が冴えてしまい、なかなか眠れないという状態に陥ります。

夕食は“腹七分目”が理想

漢方では「脾胃(ひい)」、つまり消化器系の働きを非常に重視します。
脾胃が元気であれば、気血がしっかりと作られ、全身に巡ります。しかし、夜遅くに重たい食事を摂ると、脾胃に過度な負担がかかり、眠りの質を低下させる原因となるのです。
理想的な夕食は、消化の良い食材を中心に、量は「腹七分目」程度
例えば、温かい野菜の煮物や、白身魚の蒸し料理、雑穀入りのお粥などが適しています。冷たいものや脂っこいものは避け、体を内側から温めるような食事を心がけましょう。

タイミングは“就寝の4時間前”までに

食事のタイミングも重要です。
漢方では、食後すぐの就寝は不眠だけでなく、翌朝の胃もたれや倦怠感にもつながります。
理想的には、就寝の4時間前までに夕食を済ませること。これにより、消化がある程度進み、体が休息モードに入りやすくなります。
また、スマホやテレビなどの強い光を避け、心を静める時間を持つことも、漢方的な「眠りの準備」と言えるでしょう。

まとめ

漢方では「眠り」は単なる休息ではなく、「養生(ようじょう)」の柱とされています。質の良い眠りは、気血を補い、五臓六腑を整え、心身のバランスを保つために欠かせません。そのためには、日々の食事、特に夕食の内容とタイミングを見直すことが、最も身近で効果的な養生法なのです。
不眠に悩んでいる方は、まずは今日の夕食から見直してみてはいかがでしょうか。体をいたわる食事が、心地よい眠りへの第一歩になるかもしれません。

中山 貴央

中山 貴央先生

  • 薬剤師
  • 国際中医専門員
  • 薬膳コーディネーター

子宝相談、婦人科相談、美容相談を専門としています。
唯一無二の自分の心と体、そして人生だからこそ根本から改善できる漢方を試していただきたいと思っています。