不眠を漢方で改善する際の注意点
こんにちは、宇都宮市の漢方相談・天明堂薬局の中山です。
今回は漢方相談として三番目に多い、不眠症について少し記事を書いてみたいと思います。
「眠れない」という悩みは、現代人にとって非常に身近なものになっています。
結果を急がないことも重要
眠りが浅い、寝つきが悪い、途中で目が覚めてしまう――こうした不眠の症状は、心身の疲労を蓄積させ、日中の集中力や気力を奪い、さらには免疫力やホルモンバランスにも影響を及ぼし、幸せな毎日の妨げになります。
当店にも漢方による改善を希望される方がたくさんいらっしゃいますが、ここで最も大切なことは「結果を急がない」という姿勢です。
体質改善とは…
西洋医学の薬が「症状を抑える」ことを目的とするのに対し、漢方は「体質を改善する」ことを目的としています。
つまり、眠れないという結果だけを取り除くのではなく、なぜ眠れないのか、その背景にある体質や生活習慣を見直し、根本から改善していくことが重要です。
体質は一朝一夕で変わるものではありません。数日で劇的な変化を期待するのではなく、数週間から数か月をかけて、少しずつ身体のバランスを取り戻していくことが漢方の本質です。
例えば、漢方では「不眠」を単なる睡眠障害として捉えるのではなく、「心身の陰陽バランスの乱れ」「気血の不足や滞り」「肝や心の働きの不調」など、全体の調和の問題として考えます。
夜になると自然に眠りにつけるのは、昼間に活動して消耗した「陽」が静まり、「陰」が優位になるからです。しかしストレスや不規則な生活によって陰陽の切り替えがうまくいかなくなると、夜になっても心身が鎮まらず、眠りに入れなくなります。こうした状態を整えるには、漢方薬だけでなく、生活習慣の見直しも不可欠です。
改善を少しでも早く達成するために
「結果を急がない」という姿勢は、生活習慣の改善にも通じます。
例えば、
・寝る前のスマートフォン使用を控える
・夕食を軽めにする
・朝はしっかり光を浴びる
・軽い運動を取り入れる
これらはすぐに効果が出るものではありませんが、続けることで少しずつ眠りやすい体質へと導いてくれます。漢方薬はその過程をサポートし、体質改善を後押しする役割を果たします。
また、漢方による不眠改善では「小さな変化に気づく」ことが大切です。
昨日より少し寝つきが早かった、夜中に目覚めても再び眠りやすかった、日中の疲労感が軽くなった――こうした小さな変化は、体質が整いつつあるサインです。
結果を急ぐあまり「まだ眠れない」と焦ってしまうと、その焦り自体がストレスとなり、改善を妨げてしまいます。むしろ「少しずつ良くなっている」と前向きに捉えることが、漢方の効果を最大限に引き出す心構えです。
不眠改善において、漢方が教えてくれるのは「時間を味方につける」という考え方です。体質はすぐには変わらないけれど、確実に変わっていくものです。焦らず、じっくり、自分の身体と向き合いながら、生活習慣と漢方を組み合わせていくことで、やがて自然な眠りが戻ってきます。
まとめ
眠りは「心と身体の休息」であり、人生の質を左右する大切な要素です。だからこそ、短期的な結果にとらわれず、長期的な視点で改善に取り組むことが必要です。漢方はその道のりを支える伴走者のような存在。結果を急がず、体質改善のプロセスを楽しむことこそが、真の不眠改善への近道なのです。