高血圧と漢方
日々絶えず全身を流れる血液。
血圧とは心臓から送り出された血液が血管壁に与える圧力のことを言います。
若いころは血管も柔らかいため多少の圧がかかっても問題になる事は少ないですが、加齢と共に血管は硬化していき、過度な圧力により破れやすくなります。
高血圧は『サイレントキラー』とも呼ばれ、知らず知らずのうちに症状が進行していきます。
西洋医学的なアプローチは対処療法的である場合が多く、体質改善に目を向けた漢方・中医学はQOLの向上が求められる今後の日本において今まで以上に注目されていくことでしょう。
漢方・中医学の知恵をもとに高血圧になりにくい体質づくりを始めていきましょう。
漢方・中医学における高血圧の原因
漢方・中医学の視点では高血圧の問題点は、瘀血の問題、そして五臓における『心』『肝』『腎』の不調があると考えます。
瘀血
瘀血とは血行不良や血液ドロドロに近い状態です。
血脈中に瘀血が存在することで血の流れが妨げられ、血管壁への圧も上昇します。
瘀血は冷え、ストレス、疲労、睡眠不足など様々なことが要因となり、デスクワーカーが増えつつある日本では多くの人が抱えている症状です。
瘀血がある人に特徴的な症状として
- 下が紫色(暗い色)
- 強めの頭痛を感じる
- 目の下にクマがある
- 刺すようなツキンとした痛みを感じることがある
- 冷え性
- 静脈が浮き出る
- 顔色が暗い
- 疲れが抜けにくい
などが挙げられます。
心と肝の不調
漢方や中医学における『心』には『心主血脈』という概念があり、これは現代医学の心臓に近い働きと言えます。
また、心には『心主神志』という概念もあり、精神、意識、思惟活動をコントロールする働きもあり、これは現代医学における脳の働きに近いものです。
『肝』には疏泄機能というものがあり、これは現代医学における自律神経を整える働きに近いものと言えます。
つまり『心』と『肝』は心臓を正常にコントロールするうえでとても重要な臓といえます。
肝と心は五臓の関係でいうと『親と子』にあたり、肝の不調はそのまま心の不調を招きます。
肝はストレスや怒り、夜更かし、酒、季節の変わり目などの影響で調子が悪くなります。
そういう意味では瘀血同様に現代人の多くが肝の不調を持っている可能性があると言えます。
肝の不調により心の機能が乱れることで、心が過剰に動いてしまい血圧が上がる、というわけです。
これはドラマや漫画などで激怒した人に対し『血圧が上がるからやめておけ!』という描写にも表れています。
中国のドラマでは相手の軍師をわざと怒らせて血圧をあげ、脳出血を起こさせ倒した、などというシーンもありました。
肝の不調から心の調子が悪くなる人に特徴的な症状として
- 目の疲れ
- イライラしやすい
- 強い頭痛
- 入眠困難
- 赤ら顔
- 人の話を聞かない
- 落ち着きがない
- 声が大きい
- 威圧的
- 目つきが鋭い
などが挙げられます。
心と腎の不調
漢方や中医学において『心の陽と腎の陰』のバランスはとても重要です。
陰と陽はともに助け合い、制しつつもバランスを保っていることが通常です。
高血圧を起こしている人は心の陽が高ぶり、腎の陰が不足している可能性があります。
腎の陰が不足することで心の陽を抑えることが出来なくなり、心の陽が心火となって過剰な働きをします。
いわば心が必要以上に働いてしまう=高血圧を引き起こす
という事です。
この状態を『心腎不交』と呼びます。
特に女性は更年期に陰の減少が急激に進む事があります。
心腎不交が起こっている人に特徴的な症状として
- ほてり
- 不眠
- 夢が多い
- 物忘れがある
- 動悸がある
- 寝汗
- 足腰の怠さ
- 精力の低下
- 頭のふらつき
- 口が渇く
- 焦る
- 怒りっぽくなる
などが挙げられます。
漢方薬とお勧めの食材
瘀血
瘀血を改善するには一般的に活血化瘀薬と呼ばれる漢方薬を服用します。
代表的な漢方薬に冠元顆粒、温経湯、血府逐瘀丸があります。
また瘀血を誘発するものに睡眠の質の低下、ストレス、油っこい食事などもあるため、状況に応じてはそれらを改善する漢方薬も併用すると良いでしょう。
お勧めの食材として
- キャベツ
- ニラ
- ネギ
- レモン
- ミカン
- 梅
- 酢
- 玉葱
- ナス
- 鯵
- 鰯
- 秋刀魚
- ひじき
- サクランボ
- 桃
- 紅花
などが挙げられます。
肝と心の不調
肝の不調から心の不調が起こっている場合は肝の働きを良くする疏肝薬、理気薬と呼ばれるものを中心に考えると良いでしょう。
余りにもストレス過多で気が上がっている場合は重鎮安神薬なども併用します。
肝は酒、ストレス、油っこい食事、過労により不調になりがちです。
瘀血同様、生活習慣上で改善が必要なものがあればそれに応じた漢方薬が必要になる場合もあります。
お勧めの食材として
- キャベツ
- ニラ
- ネギ
- レモン
- ミカン
- 梅
- 酢
- 玉葱
- ナス
- 鯵
- 鰯
- 秋刀魚
- ひじき
- サクランボ
- 桃
- 紅花
- 陳皮
- 菊花
などが挙げられます。
心と腎の不調
腎の陰が不足し心の陽を抑えきれない場合は、腎陰を補い心火を抑える漢方薬が必須となります。
また、肝は腎の子、肝は心の親、という点から見ても肝陰(主に肝血)を補うとより効率的かもしれません。
腎の陰を補い、心火を抑える代表的な漢方薬に瀉火補腎丸があります。
厳密には体質に応じて服用する漢方薬を選びましょう。
お勧めの食材として
- 牡蠣
- シジミ
- アサリ
- 海藻
- のり
- キウイフルーツ
- アワビ
- クラゲ
- イカ
- 貝柱
- ゴマ
- 黒豆
- キャベツ
- ブロッコリー
- ゴボウ
- サツマイモ
- ブドウ
- 栗
- エビ
- ひじき
- トウモロコシ
- ゴーヤー
- キュウリ
- 大根
- トマト
- 羊肉
- エビ
- 鰻
- ナマコ
- クルミ
- ニラ
- アワビ
- クラゲ
- イカ
- 貝柱
- 豆
- ゴマ
- 小麦
- 山芋
- クルミ
- クコの実
人生100年時代と言われる昨今、我々は唯一無二の自分の肉体と精神をいかに長く健康的に保てるかがとても重要です。
漢方や中医学的に高血圧を考えると、血行不良、ストレス、運動不足、不眠、加齢に対する対策がとても重要であることが分かりますね。
漢方や中医学は体質改善、つまり病気になりにくくなることを目標としています。
サイレントキラーと呼ばれる高血圧、その忍び寄る足音から目を背けずにできる予防をしていきましょう。