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不眠と漢方

漢方や中医学の古文では不眠について「不得眠」(眠りを得ず)と書かれており、昔から不眠に悩まされてきた人が多かったことが推測されます。
そのため、不眠については多くの研究がなされており、その原因は現代人にも多く当てはまります。
漢方や中医学による不眠の原因は多岐にわたり、体質を重んじる医学の得意分野とも言えます。

不眠の原因

情緒失調

「嫌なことがあって眠れない」「怒りが込み上げて眠れない」「不安なことがあって眠れない」おそらくこのような経験は誰でもあるのではないでしょうか?
漢方や中医学では「怒れば気が上がり、喜べば気が緩み、悲しめば気が消え、…思えば気は結ばれる」と考えられ、
過度な精神活動は体調に大きく影響します。特に不眠に影響を与える感情は「憂・怒・思・悲」です。
そしてこの4つの感情によって乱される臓腑が心・肝・脾になります。情緒の変化により心・肝・脾が機能を乱すことで不眠を引き起こします。
特に体質に問題がなくても突発的に起こるため、誰にでも起こりえる不眠の原因と言えます。
体質の異常ではないので特別な改善は必要ない場合が多いです。

心脾両虚

「疲れているのに眠れない」「体力がなくて眠れない」このような不眠に多いのが心脾両虚です。
漢方や中医学において、血には内臓に栄養を与える(養う)役割があります。心が十分に養われていないと「心不蔵神」という状態が起こり心を穏やかにすることができず不眠になります。この原因は圧倒的に女性に多く、貧血体質や、加齢や産後などにより体力が落ちている時に起こります。

心脾両虚に特徴的な症状

・眠りが浅い ・寝つきが悪い ・夢を見ることが多い ・動悸 ・倦怠感 ・無力感 ・食欲不振 ・顔色が悪い ・不安感

心腎不交

一般的に年配の方に多く見られる不眠です。 心は火(興奮)の特徴があり、腎は水(冷静)の特徴があります。心腎不交とは「心(火)と腎(水)のバランスが乱れた状態」です。年を取るとしわが増えるように腎(水)が衰えていきます。すると心(火)を抑えることができなくなります。
火は心身を興奮させるため、眠りにつくことが困難になってきます。年配の人でなくても体質(火照り症)や生活環境(暑い地域 暑い時期)で心と腎のバランスが乱れる人もいます。
このタイプの人はまるで体の中で弱い焚火が燃えているような状態であるため、手や足が火照りやすく、頬や顔全体がほんのり赤みを帯びていることがあります。

心腎不交の特徴的な症状

・気持ちが落ち着かない ・手足が火照る ・口が渇く ・物忘れ ・耳鳴り ・腰痛

肝鬱

肝は気の巡りをコントロールしており、肝の不調が起きると、停滞した気が頭部へと上昇します。
頭部に過剰な気が集まることで、イライラ、興奮、頭痛、怒りやすいなどの原因になります。
肝鬱の人は全体的に気が上がっているため、目尻が上がって目つきが鋭かったり、目に過剰な力が入っていたり、口調が強く大声になる傾向があります。
気が上昇しているため、人の話を聞くことが苦手で、短気の傾向があります。

肝鬱に特徴的な症状

・寝つきが悪い ・夢をよく見る ・驚きやすい ・ため息をつく ・怒りっぽい ・イライラしている ・目が充血する

痰熱内櫌

痰熱内櫌は暴飲暴食など飲食の不摂生が原因で起こる不眠です。
油っこい物やアルコール、高カロリーな食事、濃い味付けは体の中に余分な熱をため込みます。このような生活が長引いていると痰(体の中の不要なもの)が溜まります。痰は長引くと熱を帯びて痰熱となり、結果、体を興奮させて不眠の原因になります。太っている、汗をかきやすい、赤ら顔、運動不足、中性脂肪や悪玉コレステロールが気になる人はこのタイプの不眠かもしれません。

痰熱内櫌に特徴的な症状

・落ち着きがない ・口の中が苦いことがある ・眩暈 ・頭が重い

胃気不和

胃気不和は胃の働きが低下している状態です。
胃は食べ物を納め、消化し、腸へと運搬する役割がありますが、胃が弱るとこの機能が低下するため、胃部にいつまでも食べ物が残る感じがします。
「胃がムカムカして、ゆっくり横になれない」という場合は胃気不和を起こしている可能性があります。この不眠は病気というよりも一時的なものであるため、気にならない場合や薬を必要としないケースがほとんどです。帰宅時間が遅く夕食と就寝の間が4時間未満の人に多くみられます。

胃気不和に特徴的な症状

・胃のムカつき ・げっぷが出る ・下痢や軟便 ・お腹の張り

漢方薬とお勧めの食養生

心脾両虚

心脾両虚は心身共に疲労しているため、心脾の気血を増やす漢方薬がお勧めです。
代表的な漢方薬に帰脾湯や甘麦大棗湯が挙げられます。

帰脾湯は気血を補う処方の中でも胃腸にやさしく穏やかに作用してくれます。
人参、黄耆、白朮など胃腸の働きを良くする生薬と、当帰、龍眼肉など心に栄養を与える生薬が組まれています。長期的に服用する事で気力や体力の強化にもつながります。
産後などで気血の消耗が激しい場合や、体質的に気血が不足しがちな人にお勧めです。
精神的な疲労が強い場合は酸棗仁湯などを併用するとより効果的でしょう。

甘麦大棗湯は小麦、甘草、大棗の3つの生薬で作られたシンプルな処方です。心を養うことに特化した処方で、ヒステリーやてんかん、精神情緒の不安定な場合に使われます。比較的、即効性のある処方で不安な事や気持ちが疲れた時に服用すると良いでしょう。

心脾両虚にお勧めの食材

・ニンジン ・ジャガイモ ・サツマイモ ・サトイモ ・山芋 ・舞茸 ・椎茸 ・肉類全般 ・鰻 ・鱈 ・鮭 ・秋刀魚 ・鯖 ・鰹 ・鰯 ・タコ ・イカ ・米 ・卵 ・小麦 ・生姜 ・赤身の魚全般 ・アサリ ・シジミ ・牡蠣 ・ひじき ・ほうれん草 ・小松菜 ・玉葱 ・イチゴ ・ブドウ・棗 ・桃 ・ライチ

肝鬱

肝鬱は情緒が乱れて興奮状態にあるため、興奮を鎮める漢方薬がお勧めです。
このタイプはお薬で治すことも良いですが、適度な運動や気分転換、会話、リラックスする時間を設けることもとても重要です。当然、体を興奮させるようなアルコール、強い香辛料は控えた方が良いでしょう。そのような養生を踏まえたうえで以下の漢方薬がお勧めです。
代表的な漢方薬に加味逍遥散があります。
逍遥という言葉には「気ままに散歩する」という意味があり、まさに煮詰まった時に気分転換をするかのような処方です。清熱作用のある生薬も入っているので、怒りと火照りが併発している人に効果的です。
女性のPMSに使用するイメージの強い漢方薬ですが、男性にもお勧めです。

肝鬱にお勧めの食材

・キャベツ ・ニラ ・ネギ ・レモン ・ミカン ・梅 ・酢 ・玉葱 ・ナス ・鯵 ・鰯 ・秋刀魚 ・ひじき ・サクランボ ・桃 ・紅花 ・陳皮 ・菊花

心腎不交

心腎不交は心と腎のバランスを整える漢方薬がお勧めです。
一般的には心(火)を抑え、腎(水)を増やすことでバランスを取ります。
肝鬱と同様、辛い物やアルコール、高カロリーな食事は控えたうえで漢方薬による改善を試みましょう。
代表的な漢方薬に天王補心丹や瀉火補腎丸があります。
天王補心丹は心腎不交を改善する処方で、生地黄や天門冬、麦門冬などが清熱と補陰をして、その他の生薬も心を安らかにするものが多いです。

瀉火補腎丸は知母、黄柏といった清熱作用の強い生薬を用いた補腎薬になります。天王補心丹よりも体を冷やす力が強いので、顔が赤く興奮気味で手足が火照るような場合に用います。
この処方は更年期障害の女性で多汗、イライラ、火照り、不眠の場合にとてもお勧めです。

天王補心丹も瀉火補腎丸も老化に関わる臓である腎を補うため、緩やかなアンチエイジングにも良いでしょう。

心腎不交にお勧めの食材

・牡蠣 ・シジミ ・アサリ ・海藻 ・のり ・キウイフルーツ ・アワビ ・クラゲ ・イカ ・貝柱 ・ゴマ ・黒豆 ・キャベツ ・ブロッコリー ・ゴボウ ・サツマイモ ・ブドウ ・栗 ・エビ ・ひじき ・トウモロコシ ・ゴーヤー ・キュウリ ・大根 ・トマト 

痰熱内櫌

痰熱内櫌は体の中に溜まった不要なものを排出する漢方薬がお勧めです。
熱痰を排出させ、体の中にたまった過剰な熱を放出させる必要があるため、油っこい物、アルコール、タバコ、高カロリー、濃い味付けはNGとなります。新鮮な野菜や質の良い油を積極的に摂り、運動でしっかりと汗をかくことが大切です。そのような食生活の改善を踏まえて以下の漢方薬を試しましょう。

代表的な漢方薬に竹筎温胆湯があります。
この処方は痰熱内櫌の不眠にとてもお勧めです。基本処方である温胆湯は痰湿を改善する代表的な処方構成であり、そこに黄連や柴胡など清熱する生薬が入っています。脳の興奮を抑えるような印象の処方です。
星火温胆湯は酸棗仁という安神作用のある生薬も配合されているので、不安感などもある場合は星火温胆湯も良いでしょう。

痰熱内櫌にお勧めの食材

・白菜 ・ネギ ・ナス ・もやし ・ゴボウ ・大豆 ・枝豆 ・緑茶 ・鯵 ・鯖 ・わかめ ・昆布 ・トウモロコシ ・玄米

胃気不和

胃気不和は消化不良からの不眠であるため、「夕食と就寝の時間を4時間とる」「夕食に消化の悪い物を食べない」などに気を付ければ、特に問題にはならないタイプです。しかし、帰宅時間が遅かったり、生活のリズムが不安定な人もいると思います。そのような場合は、消化を助けてお腹をすっきりとしてくれる処方がお勧めです。

代表的なものに晶三仙があります。
晶三仙はハーブティーとして発売されており、使い勝手がよく安価です。
山査子、麦芽、神曲というたった3種の生薬からできています。甘酸っぱいお菓子のような味がするため小さなお子さんでも抵抗なく飲めます。
お腹の弱りが気になる人は、夕食後に晶三仙を服用するのも良いかもしれません。

まとめ

不眠は「眠れない→疲れが取れない→イライラ&疲労→情緒失調→眠れない」と負のスパイラルに陥りがちです。漢方や中医学では人それぞれの体質や生活環境などを踏まえたうえで対策を練っていきます。

自分に合った不眠改善法を見つけていきましょう。

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