糖尿病と漢方

糖尿病の現状

現在、世界中で糖尿病になっている人はおよそ5億4千万人と言われています。
これはつまり『世界の10人に1人は糖尿病』ということになり、世界的にも深刻な病気の一つと考えられます。
驚異的なのはその増加率で、2000年(約1億5千万人)と比べるとたった20年で3.6倍にまで跳ね上がっています。
日本においても糖尿病患者数はおよそ1千万人と言われ、医療費は1兆2200億円とされています。
それほど現代人において身近な病となっている糖尿病ですが、糖尿病は古来より存在しており多くの研究がなされてきました。
今回は西洋医学とは違う中医学・漢方ならではの糖尿病に対するアプローチをご紹介します。

中医学・漢方における糖尿病とは

古来より糖尿病のような症状は『消渇(しょうかつ)』と呼ばれてきました。
消渇とは『体力の耗が激しく、口がく』という症状の特徴を表しています。
中医学において興味深いのは消渇を『上消』『中消』『下消』と3段階に分けて考えたことです。
一般的に上消→下消につれて症状が悪化すると考えられています。
上消・中消・下消の具体的な症状には

上消 五臓の中の肺の症状が目立ち、口の渇き、多飲が目立つようになります。
中消 五臓の中の脾胃の症状が目立ち、胃腸の働きが異常亢進し飲食の量が過剰に増えるが空腹感も感じやすく、体重の減少も見られる
下消 五臓の中の腎の症状が目立ち、水分代謝の異常が起こり尿量が増えていきます。

それぞれのタイプにおける漢方的改善方法

上消

口の渇き、多飲は主に肺燥の状態が考えられます。

肺燥状態の人は特徴として

  • 皮膚の乾燥
  • 大便が固くなる
  • 粘っこい痰が出る
  • 咳が出る
  • 気持ちがソワソワする
  • 口の渇き
  • 水分を過剰に欲しがる

などの特徴が挙げられます。

この場合は肺熱をとりつつも肺の乾燥を防ぐ漢方薬を服用します。
具体的な処方は、体調や体質に合わせて厳密に考慮する必要があるので、服用の際は必ずご相談ください。

お勧めの食材としては

  • バナナ
  • イチゴ
  • 大根
  • スイカ
  • 牛乳
  • 白きくらげ
  • 白ごま
  • ゆり根
  • 白菜

などが挙げられます。

フルーツなど糖分の多い食材については摂り過ぎに注意も必要です。
また、肺を乾燥させるタバコや香辛料は極力控える必要があります。

中消

胃腸機能の異常亢進は胃熱という状態が考えられます。
『熱』には単純な寒熱の意味以外に『亢進する』という意味も含まれます。
日頃から味の濃いものや辛いもの、アルコール、過食気味の人に多く見られます。

胃熱が起きている人の特徴は

  • 口臭がきつい
  • 口が渇く
  • 過食
  • 便秘
  • のぼせる
  • イライラしやすい
  • 冷飲冷食を好む
  • 胸やけがする

などが挙げられます。

この場合は胃熱をとる漢方薬を服用します。
具体的な処方は、体調や体質に合わせて厳密に考慮する必要があるので、服用の際は必ずご相談ください。

お勧めの食材として

  • ハトムギ
  • 蕎麦
  • 豆腐
  • 白菜
  • 冬瓜
  • 大根
  • スイカ
  • バナナ
  • トマト
  • ナス
  • キュウリ
  • セロリ
  • クレソン
  • もやし
  • ゴーヤー
  • レタス

などが挙げられます。

フルーツなど糖分の多い食材については摂り過ぎに注意が必要です。
味の濃いもの、香辛料、アルコールは控えるようにしましょう。

下消

腎の不調により尿量が増えたり、頻尿になることで体液不足が起こりやすくなります。
体液(陰)が不足すると体の陰陽のバランスも乱れ、陽に傾き『熱っぽさ』が表れます。
また、「腎は精を蔵す」と言われるように、腎の衰えは精の消耗を促します。
精が不足すると精神的にも肉体的にも活力が低下し、急激な衰えを感じる場合もあります。

腎の陰が不足している人の特徴として

  • のぼせ
  • 手足の火照り
  • 入眠困難
  • 熟睡感が低
  • 怒りっぽくなる
  • 足腰が怠い
  • 冷たいものを欲しがる

などが挙げられます。

この場合は腎陰を補う漢方薬を服用します。
具体的な処方は、体調や体質に合わせて厳密に考慮する必要があるので、服用の際は必ずご相談ください。

お勧めの食材として

  • 牡蠣
  • シジミ
  • アサリ
  • 海藻
  • のり
  • キウイフルーツ
  • 黒豆
  • 黒きくらげ
  • アスパラガス
  • 山芋
  • 豚肉

などが挙げられます。

瘀血(血行不良)は上消・中消・下消に関わらずに改善しましょう

尿病の状態が続くと血液粘度が上昇し、血行不良状態になります。
糖尿病の症状として有名な末梢神経障害や痺れも、中医学での『不通即痛(流れが悪くなると痛みが起きる)』という考えにとても近いです。
血行不良は糖尿病を悪化させるだけでなく、脳梗塞、心筋梗塞、認知症、網膜症、腎障害の引き金になる事も多いため、糖尿病の改善と並行して取り組まなくてはなりません。

ただ、安易に血行を良くする漢方薬を服用すると副作用が出てしまう場合もあるため、服用の際は必ずご相談ください。

お勧めの食材として

  • キャベツ
  • ニラ
  • ネギ
  • レモン
  • ミカン
  • ナス
  • 秋刀魚
  • ひじき
  • サクランボ
  • 紅花

などが挙げられます。

まとめ

糖尿病は現代人にとっては恐ろしく身近な病の一つと言えます。
適度な運動、十分な睡眠、昼夜リズムの良い生活、過食の予防など予防に必要なことは数え切れません。
少しでも悪化を防ぐためにも漢方薬を上手に使用してみましょう。

その他漢方相談の関連記事