漢方からみる排卵後の高温期と腎陽虚

こんにちは、宇都宮市の漢方相談・天明堂薬局の中山です。

今日のブログは妊活と漢方について。
特に排卵後に体温が0.3℃以上上がらない、いわゆる「高温期が弱いタイプ」について書いてみます。

女性の体は月経周期に合わせて繊細に変化します。
特に基礎体温の変化は、ホルモンバランスや体の状態を映し出す鏡のような存在です。排卵を境に体温が上昇し、高温期が続くことは一般的に知られていますが、この高温期が十分に上がらない、あるいは安定しない場合、漢方では「腎陽虚(じんようきょ)」という状態が関係していると考えます。

漢方における「腎」とは

漢方でいう「腎」は、西洋医学の腎臓だけを指すものではありません。
生命力の根源であり、生殖機能や成長、老化に深く関わるエネルギーの貯蔵庫とされます。腎には「腎陰」と「腎陽」があり、陰は潤いや栄養、陽は温める力と活動性を象徴します。
排卵後の高温期は、体を温める「腎陽」の働きが重要です。

腎陽が不足すると、体を十分に温められず、基礎体温が上がりきらない、あるいは高温期が短くなる(9日未満)といった現象が起こりやすくなります。これは妊娠を望む女性にとって大きな課題となり、冷えや疲労感、月経不順などの症状を伴うこともあります。

腎陽虚のサイン

腎陽虚は「体を温める力の不足」と表現できます。具体的には以下のようなサインが見られることがあります。

排卵後の高温期が低い、または短い

手足の冷え、特に下半身の冷えが強い

朝起きても疲れが残る

顔色が白っぽく、気力が湧きにくい

月経周期が乱れやすい

これらは単なる体質の問題ではなく、体のエネルギー不足を示すサインとして漢方では捉えます。

補腎陽の代表的な漢方薬

腎陽虚を補うために用いられるのが「補腎陽薬」です。代表的なものに 参茸補血丸(さんじょうほけつがん) や 参馬補腎丸(さんばほじんがん) があります。

参茸補血丸は高麗人参や鹿茸(ろくじょう)などを含み、体を温めつつ血を補う働きがあります。冷えや疲労感が強く、血虚を伴う場合に適しています。

参馬補腎丸は脾腎の力を強めることを目的としています。
特に胃腸が弱く、生殖機能の低下や精力減退、冷えを伴う不調に用いられることが多いです。

これらは単なる滋養強壮薬ではなく、体の根本的なエネルギー不足を補い、温める力を回復させることを目指しています。

現代女性へのメッセージ

現代社会では、ストレスや不規則な生活、過度なダイエットなどが腎陽虚を招きやすい要因となっています。冷えを軽視せず、体を温める生活習慣を心がけることが大切です。
例えば:

朝は血流を良くする漢方を飲んで体を温める

下半身を冷やさないよう靴下や腹巻きを活用する

睡眠をしっかりとり、腎を休ませる

適度な運動で血流を促す

こうした日常の工夫と漢方薬の力を組み合わせることで、体のリズムを整え、妊娠を望む方にとっても心強いサポートとなります。

まとめ

排卵後の高温期が低いというサインは、漢方的には「腎陽虚」の可能性を示しています。腎陽を補うことで体を温め、生命力を高めることが期待できます。参茸補血丸や参馬補腎丸といった補腎陽薬は、その代表的な選択肢です。冷えや疲労感を抱える女性にとって、漢方は単なる症状改善ではなく、体の根本を整えるための知恵を提供してくれます。

体の声に耳を傾け、漢方の視点を取り入れることで、より健やかな毎日へとつながっていくでしょう。

中山 貴央

中山 貴央先生

  • 薬剤師
  • 国際中医専門員
  • 薬膳コーディネーター

子宝相談、婦人科相談、美容相談を専門としています。
唯一無二の自分の心と体、そして人生だからこそ根本から改善できる漢方を試していただきたいと思っています。