○○病に効く漢方薬はありません
こんにちは、宇都宮市・天明堂薬局の中山です。
時々、電話で以下のようなお問い合わせをいただくことがあります。
「○○病にかかっているんだけど、○○病に効く漢方はそちらにはありますか?」
このお問い合わせに対し私は
「○○病の改善に使用される漢方薬は様々あるため、体質に応じて使い分ける必要があります。そのため、具体的なご提案はカウンセリングをしてからとなります」
と、答えます。
そうすると
「あ~、そうですかぁ…。分かりました。」
と、電話を切られてしまいます。
おそらく私が思うにこのようなお電話をされる方は、私から
「はい!○○病に効く漢方ありますよ!」
と、答えてほしいんだと思います。
…じゃぁ、そう答えればいいじゃん…。
そう思う方も多いと思いますが(笑)、しかし専門家の立場として「嘘」は言えません。
今回はなぜ、専門店だからこそ「はっきり言えないのか」をブログで書いてみたいと思います。
同病異治・異病同治
漢方の世界には同病異治(どうびょういち)・異病同治(いびょうどうち)という基本的な考え方があります。
これは「同じ病でも治し方が異なる・異なる病でも同じ治し方をする」というものです。
具体例を挙げれば分かりやすいと思います。
例えば「風邪」という「病」があった場合でも
・20代の体力があり胃腸が丈夫な男性
・80代の体力もなく胃腸も弱い女性
では、使用される漢方薬は異なるわけです。
それはつまり「体質」によって同じ「病」でもアプローチの仕方が変わるという事であり、当然と言えば当然の事ですよね。
これが先ほどの「○○病に効く漢方ください」は「体質なんて関係ない」という事になり、適切な漢方薬を選ぶことが出来ないわけです。
先ほど、私は「専門家だからこそはっきり言えない」と書きました。
これがすごい「皮肉」であることがもうお分かりだと思います。
SNSや雑誌、ネット通販のサイトなどを見ていると
「この漢方薬で○○病が治った」
「△△病で苦しんでいる人にお勧めの漢方はこれ!」
などの売り文句を見る事が度々あります。
しかし、これらは「同病異治・異病同治」の基礎理論から大きく逸脱しているものです。
確かに漢方に知識がない一般の方からすれば、小難しいカウンセリングなどせずに簡単に購入できたほうが「楽」なのかもしれません。
しかし、漢方薬は「薬」です。
簡単に購入して体内に入れて良いのか…?
通販なら安いから、気軽だから、良いのか…?
そういう点を考えると、やはり安易に「○○病に効く漢方ありますよ」とは答えにくいわけです。
まとめ
SNSの普及は情報を広めるうえで大きな役割があると思います。
しかし、より普及させようと「過激な文言」「誤解を招く表現」が散見されているのも事実であり、漢方薬の世界でもそれは横行しています。
大切なご自身の「体と心と人生」だからこそ、「カウンセリング」を大切にしてくださいね。