黄体機能不全と漢方

排卵後、高温期に以降しても高温期が9日未満であったり、低温期と高温期の差が0.3度に満たないことがあります。
この原因の一つとして、黄体の働きが悪く、十分な量の黄体ホルモンが分泌されていないことが考えられます。
このような状況を黄体機能不全と呼びます。
黄体機能不全は着床障害・流産などの不妊の原因や、生理不順、不正出血などの原因にもなり女性にとってはとても重要な問題です。
西洋医学的にはホルモン補充や排卵誘発剤の使用が一般的ですが、効果が一時的であり、またホルモン剤による不調や排卵誘発剤を継続服用することによる不安を感じる人も少なくありません。

漢方の世界では質の良い卵を作ることが、すなわち質の良い黄体につながり、理想的な高温期を作ると考えます。
そのため生理から排卵日までは質の良い卵を作ることを意識した漢方薬を、排卵後から生理までは高温期を維持することを意識した漢方薬を服用すると良いでしょう。

理想的な基礎体温と黄体機能不全を疑う基礎体温

漢方における黄体機能不全の原因

漢方において黄体機能不全は腎虚を考えます。
腎は生殖・成長・発育に関わるため、腎が弱くなると生殖能力が低下すると考えます。
腎虚の体質にある女性は質の良い卵胞の成熟に影響が出ると考えます。
腎は女性であれば7の倍数で変化すると考えられ、おおよそ28歳をピークに低下していきます。35歳くらいになると体感的に腎の弱りが目立つようになります。
西洋医学的にも35歳以上を高齢出産とすることも、単なる偶然とは言えないかもしれません。
腎を補う漢方薬はおもに動物性生薬を中心とした漢方薬が良いでしょう。
参茸補血丸や参馬補腎丸などが有名ですが、体質に応じて使い分けていく必要があります。

また、ストレスなどが原因でFSHの分泌に問題が生じ、卵胞の成熟が不十分になる事も原因として考えられます。漢方においてストレスが心身に悪影響を与えている状況を気滞と呼びます。生理前の胸の張りやイライラなどの症状が目立つ場合は気滞を改善する漢方薬、例えば逍遥顆粒などを併用することもあります。
その他にも血行不良の意味合いがある瘀血や胃腸虚弱に近い脾虚など黄体機能不全などを起こしやすい状態が考えられます。
体質に応じた対策を考えていく必要があります。

まとめ

黄体機能不全は女性不妊症の10~30%、不育症の25~60%存在するとも言われています。
そのため、子宝を考えている夫婦にとってはまず黄体がしっかりと機能しているかを診断することが大切です。基礎体温を測り、高温期が10日未満、温度上昇が0.3度に満たない場合は一度病院で検査をすることをお勧めします。
そのうえで、西洋医学的な対策の他に漢方による体質改善を並行していくと良いでしょう。

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