不育症・習慣性流産と漢方

一般的に妊娠した女性が流産や死産を2回以上連続してしまう状態を不育症と呼びます。
さらに3回以上繰り返している場合は習慣性流産と呼ばれています。
不育症や習慣性流産の原因はいまだに不明確な事が多いですが、原因として以下の事が考えられています。

血液凝固異常

胎盤に血栓ができてしまい、胎児に栄養や酸素が行き届きにくくなり流産を誘発します。
対応策として、低用量アスピリンなどを服用します。

内分泌異常

甲状腺や血糖の状態が不安定だと流産を誘発します。
対応策として、内服薬などでホルモン値や血糖をコントロールします。

子宮の異常

子宮の形が悪い(双角子宮や中隔子宮)ことにより着床や妊娠の維持が難しくなることがあります。
子宮奇形は手術による対応となります。

染色体異常

夫婦間の染色体に異常があり、受精卵の染色体異常を起こし流産を誘発します。
現在の医療では治療が難しいとされています。

不育症・習慣性流産に対する漢方の考え方

漢方の視点から不育症・習慣性流産を考えると腎虚、瘀血、気血不足を原因として挙げます。

腎虚

漢方における『腎』は西洋医学における腎臓とは異なり、生殖の働きも含まれます。
『人の老化は腎の老化』という言葉もあるほど、腎は老化と密接に関係しており、女性であれば28歳あたりが最も腎の働きが良く、その後は低下の一途をたどります。
35歳を過ぎるあたりからさらに腎の弱りが目立つようになります。そのため、35歳以上の方で妊活を希望される場合は腎の働きを高める補腎薬を服用することを推奨します。
腎には厳密には腎陰と腎陽があり、その人の体質に応じて具体的に処方は決めるべきです。
服用の際には必ずご相談ください。

瘀血

瘀血とは血行不良に近い考えです。
瘀血の状態になると内膜も固く、着床しにくくなると考えます。
また、着床後も胎児に十分な気血が行き届きにくくなるため流産のリスクが高まると考えます。
この点は西洋医学的な原因である『血液凝固異常』に近いと言えるでしょう。
日頃から経血にドロッとした塊が出る人は子宮付近の瘀血を疑いますので、生理時には必ず確認しましょう。

気血不足

漢方における気は心や体を動かすエネルギーのような存在です。
特に気には固摂作用(こせつさよう)というものがあり、この作用により胎児を子宮の中で安定させると考えます。
また胎児に栄養や酸素を送り届けるのは血の働きです。
そのため、母体の気血が十分に備わっていることが安定した妊娠生活に不可欠です。
気血は主に食べたものから生成されます。そのため、飲食の不摂生や脾胃(胃腸のような場所)が弱いと気血を作る力が弱くなることがあります。
また、仕事内容によっては体力・気力の消耗が激しいものもあり、それが気血不足を招く場合もあります。
過度な肉体労働や夜勤など生活リズムが安定しない職種の人は気血不足を起こしやすくなります。
不育症や習慣性流産が続く場合には働き方も見直す必要があるかもしれません。

まとめ

西洋医学では不育症や習慣性流産は具体的な原因が不明確な場合が多いです。
だからこそ、漢方的な視点を取り入れてみるのはとても意味があると思います。
年齢的な問題、血流の問題、心身のエネルギーや栄養の問題を漢方的なアプローチで改善すると良い結果につながるかもしれません。
ぜひ一度ご相談ください。

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