着床の問題を漢方で改善

「移植できる受精卵が数個できるにもかかわらず、着床に至らない」このようなご相談も多く承っております。
着床の妨げになる原因は様々あり、中には筋腫やポリープなど外科的方法を必要とする場合もあります。 今回は内膜の状態の改善による着床への期待について書いてみたいと思います。

着床とは

そもそも受精した胚は細胞分裂を繰り返しながら子宮へと移動し、胚盤胞となった状態で子宮内腔に浮遊します。
そして受精してからおよそ7日目あたりになると絨毛という小さな根のようなものができて、子宮内膜にくっついて、そこからさらに内膜にもぐりこんでいき母体の血管から胎児に必要な栄養や酸素を受け取るようになります。これを着床と呼びます。

中医学的な着床しやすい条件とは…

上記のように受精卵は根を生やして子宮内膜にくっつき、子宮内膜にもぐりこむことが重要であることが分かります。
そのため、内膜が薄い、内膜が固いという状態は着床に不向きであると言えます。
これは我々の就寝時に良く似ています。
誰も固くて冷たい、ゴツゴツしたところで寝たいとは思いませんよね? 受精卵も同じです。
柔らかくてふかふかした内膜の方がより着床しやすくなると考えられます。 そして内膜が薄い状態は血虚&腎虚、内膜が固い状態は瘀血が主な原因と考えられており、この部分の改善は中医学の得意分野です。 着床しやすい体作りのために、女性としての体の基本を整える事がとても大切です。

血虚体質の特徴

血虚は血の量が足りないばかりでなく、血の働きが良くないことも表します。
中医学において血には「体を温める働き」「体に栄養を与える働き」「精神を安定させる働き」があるとされています。 そのため病院で貧血と言われていなくても以下のような症状がある人は血虚の状態と考えられます。

血虚体質の特徴

  • 経血量が減り気味
  • めまい
  • 立ちくらみ
  • 髪がパサつく
  • 肌の乾燥(肌が弱い)
  • 軽度の不眠
  • 不安感
  • 疲れやすい
  • 顔色が優れない
  • 爪が割れやすい(薄い)

腎虚体質の特徴

腎には生殖機能やホルモン系、免疫機能などを含んだ役割があります。
そのため腎虚になると生殖機能そのものが低下し、ホルモンの分泌の低下、免疫機能の低下などを招きます。「人の老化は腎の老化」という言葉もあるように、人としての老化と腎の老化には密接な関係があるため、腎の働きを高める「補腎薬」は35歳以上の妊活には必須とも言えます。
腎虚は腎陰虚と腎陽虚に分けられるため、厳密にはそのタイプによって特徴も変わってきますが、共通して言えるのは以下の通りです。

  • 腰がだるい
  • 腰に力が入らない
  • 性欲の低下
  • 考える力の低下
  • 髪が細いor抜け毛が気になる

瘀血体質の特徴

瘀血とは今でいうところの血行不良や血液ドロドロに近い考え方です。
血は生殖機能に栄養を運搬する役割もあると考えられ、瘀血になると内膜が固くなるばかりでなく質の良い卵を育てることも難しくなります。妊活において瘀血は優先的に改善すべきです。

瘀血体質の特徴

  • 頭痛
  • 肩こり(揉むとこりこり固いしこりがある)
  • 顔色が良くない(暗い)
  • 経血に塊が出る
  • 経血が暗い色
  • 生理痛がある
  • 毛細血管が浮き出る
  • しみ、そばかすが多い

血虚体質を改善する漢方薬

血虚体質を改善するには補血薬と呼ばれる漢方薬を服用する事が一般的です。特にセリ科の当帰(とうき)は卵巣機能の向上に高い効果が期待されるため非常に重要な生薬と言えます。 婦宝当帰膠や当帰芍薬散、四物湯、帰脾湯など補血作用のある処方はたくさんあるため、自分の体質に合った処方を選ぶことが重要です。当帰の含有量では婦宝当帰膠が飛びぬけて多いので、妊活における補血薬の第一選択になる事が多いです。

腎虚体質を改善する漢方薬

腎虚を改善するには補腎薬と呼ばれる漢方薬を服用する事が一般的です。補腎薬は多くの種類と特徴があるため、自分の体質に合った処方を選ぶのはなかなか難しいかと思います。間違った処方を服用するとかえって良くないこともありますので、必ずご相談の上、服用してください。 ※イスクラ産業HPより引用

瘀血体質を改善する漢方薬

瘀血を改善するには活血薬と呼ばれる漢方薬を服用するのが一般的です。
活血薬も同様に多くの種類と特徴があるため、専門家に相談のうえで選ぶことが重要です。
また活血薬は強すぎると不正出血などを引き起こすこともありますので、服用する量についても相談する必要があります。 活血薬として有名なところでは、冠元顆粒、桂枝茯苓丸、血府逐瘀丸、独歩丸顆粒、頂調顆粒などあります。

まとめ

中医学では古来より「寒冷之地、不生草木、重陰之淵、不長魚籠、今胞胎既寒、何能受孕? 」という考えがあります。
これは「寒い土地には草木も生えない。重く光の届かないところでは魚も長くは生きられない。
生殖器(卵巣や子宮)が冷えていて、どうして妊娠できます?(できませんよね?)」ということです。 先進的な医療が進む現代だからこそ、女性としての体の基礎を整えることはとても重要です。 ぜひご相談ください。

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