疲れているのに眠れない人へ

『悩み事があって眠れない』
『疲れているはずなのに眠れない』
そんな経験をしたことがありませんか?
そのような症状がある場合、漢方では五臓の中の一つ『心』の不調を考えます。

心は神を蔵す


漢方・中医学における『心』には『心は神を蔵す』という働きがあると考えています。
『神』とは精神活動や意識活動を意味し、心はまさに精神活動において重要な役割があると考えています。
日中、精神活動は活発に行われるべきですが、夜間、特に睡眠中は、精神活動は静まる(これを『蔵』と表現します)事が重要です。
心の働きが乱れ、神を蔵すことが出来ないと、夜間になっても精神活動が落ち着かず不眠につながります。

心は血の養分を得て、精神を安定させています。
そのため、血の働きが不十分な状態(血虚)になると心の働きが不安定になります。
そういう意味でも生理がある女性、食事制限によるダイエットをしている人、過度な精神疲労を要する仕事をされている人は要注意です。

心労・過労と漢方薬


心血の不足による不眠には以下の特徴があります。
・寝つきが悪い ・夢が多い ・眠りが浅い ・少し動いただけで心臓バクバク
・倦怠感 ・やる気が起きない ・食欲不振 ・顔が疲れている
・動きたくない

このような症状が目立つのであれば、心の気血を補うような漢方薬が良いでしょう。
代表的なところでは帰脾湯、加味帰脾湯、甘麦大棗湯などがあります。
帰脾湯は脾(消化器系のような存在)の働きを良くしながら、心の気血を増やしてくれます。
胃腸が弱く心労に悩んでいる人には良いでしょう。
加味帰脾湯は帰脾湯に柴胡・山梔子などを加え、清熱を目的としています。帰脾湯のような症状に加え、イライラや煩躁、興奮状態が目立つ場合に良いでしょう。
甘麦大棗湯は小麦、甘草、大棗からなるシンプルな処方で、心を養う働きに優れています。

まとめ

人は疲れていれば眠れるはず!と思いがちです。
しかし、疲れすぎても眠れなくなることはあるのです。
良い睡眠のために気血を補うなんて、意外かもしれませんね。
でも、もし、疲れているのに眠れないのであれば、このようなアプローチもぜひお試しください。

中山 貴央

中山 貴央先生

  • 薬剤師
  • 国際中医専門員
  • 薬膳コーディネーター

子宝相談、婦人科相談、美容相談を専門としています。
唯一無二の自分の心と体、そして人生だからこそ根本から改善できる漢方を試していただきたいと思っています。