春の自律神経の乱れにお勧めの漢方薬とは?
こんにちは、宇都宮市の漢方相談・天明堂薬局の中山です。
来週の立春を前に、物騒なニュースが連日報道されていますね。
刃物関係や喧嘩、暴動のようなニュースを観るたびに「春らしい」と感じてしまうのでは漢方の専門家ならではかとおもいます。
春という季節は、漢方の世界ではとても象徴的な意味を持っています。
冬まで続いた“陰”の流れがゆっくりと終わり、春から夏に向けて“陽”が立ち上がってくる転換点。自然界が芽吹き、動き出すように、人の心と体も内側からエネルギーが湧き上がる時期です。
だからこそ、普段より気持ちが揺れやすくなったり、イライラや焦燥感が強く出たりすることがあります。これは決して「自分が弱いから」ではなく、季節の変化に体が反応している、ごく自然な現象なんですね。
■ 春は「肝」が揺らぎやすい季節
漢方の基礎にある五行学説では、春は「木」に属し、対応する臓は「肝」とされています。肝は単に肝臓という臓器を指すのではなく、気の巡り、自律神経、情緒の安定などを司る広い概念です。
そのため、春は肝が影響を受けやすく、次のような不調が出やすくなります。
• イライラしやすい
• 気分が落ち着かない
• 眠りが浅い
• 胃腸の調子が乱れる
• 頭痛や肩こりが増える
• 自律神経のバランスが崩れやすい
冬の間に溜め込んでいたエネルギーが一気に動き出すことで、心身のバランスが揺れやすくなるわけです。特に現代の生活はストレスが多く、肝の働きが滞りやすい環境でもあるため、春先に不調を感じる人は少なくありません。
■ 春の不調に使われる代表的な漢方
春の揺らぎに対して、漢方では「肝の気を整える」「気の巡りを良くする」ことを大切にします。よく使われる処方には次のようなものがあります。
● 逍遥顆粒(逍遙散)
気の巡りを整え、ストレスによるイライラや緊張をやわらげる代表的な処方。
気分の波が大きい、肩こりや胃の不調を伴う、月経前に情緒が乱れやすいといったタイプに使われることがあります。
● 加味逍遙散
逍遙散に“熱”を冷ます生薬を加えた処方。
イライラが強い、のぼせやすい、顔がほてる、寝つきが悪いなど、気持ちの高ぶりが目立つ人に用いられることがあります。
● 抑肝散
神経の高ぶりを抑え、興奮しやすさや落ち着かなさを整える処方。
子どもから大人まで幅広く使われ、イライラ、不眠、筋肉のこわばりなどに対応することがあります。
これらはどれも「肝の乱れ」にアプローチする処方ですが、作用の方向性は微妙に異なります。たとえば、気が滞っているのか、熱がこもっているのか、神経が過敏になっているのかによって、選ぶべき処方は変わってきます。
■ 漢方薬は“体質と状態”に合わせて選ぶもの
ここで大切なのは、同じ「イライラ」でも原因は人によって違うということ。
気が滞っているのか、血が不足しているのか、ストレスで熱がこもっているのか、あるいは自律神経が過敏になっているのか——。漢方ではその違いを丁寧に見極めていきます。
だからこそ、春の不調に漢方薬を使う場合は、自己判断で選ぶのではなく、必ず専門家のカウンセリングを受けてほしいのです。体質や生活環境、ストレスの種類、睡眠の質、食事の傾向などを総合的に見て、最適な処方が決まります。
同じ処方でも、人によっては合う場合もあれば、逆に体調を崩してしまうこともあります。漢方は「自然の薬」だから安全というイメージがありますが、体質に合わない使い方をすると負担になることもあるため、専門家の判断がとても重要です。
■ 春は“心と体のリセット期”
春は、心と体が冬の静けさから目覚め、外へ向かって動き出す季節。
その変化にうまく乗れると、気持ちが軽くなり、やる気が湧き、体もスムーズに動き始めます。逆に、変化に追いつけないと、イライラや不安、疲れやすさとして現れることがあります。
そんな時こそ、漢方の知恵が役に立ちます。
季節の流れに寄り添いながら、自分の心と体の声を丁寧に聞き、必要に応じて漢方薬や生活習慣の調整を取り入れることで、春をより健やかに過ごすことができます。
春は新しいスタートの季節。
心と体のバランスを整えながら、軽やかに次のステップへ進むための準備期間でもあります。もし春先の不調が気になるようなら、無理をせず、専門家に相談しながら自分に合ったケアを見つけてみてください。自然のリズムに寄り添うことで、春はもっと心地よく、前向きな季節になります。