更年期障害と漢方
女性の更年期とは卵巣機能が衰え始め、消失するまでの期間を言います。
一般的に閉経前後の5年間と言われ、トータルで10年近くにもなります。
更年期障害はこの期間に起こる体調不良を指し、症状の出方や強さも様々です。
漢方の知恵で更年期障害を軽減していきましょう。
更年期障害の原因
西洋医学の卵巣機能に近い考えとして『腎』と呼ばれるものがあります。
腎は腎臓とは違い、『腎は精を蔵し、成長、発育、生殖を主る』と考えられ、生殖機能も腎の働きの一部と考えます。
腎の働きが低下してきた状態を『腎虚』と呼び、これがいわゆる卵巣機能の低下とほぼ同じ考えです。
つまり漢方では更年期障害は腎虚が原因と考えます。
腎虚には腎陰虚と腎陽虚の2タイプがあります。
陰と陽はバランスを保っています。
陰が不足し陽が過剰になると火照りや熱症状が起こりやすくなり、陽が不足し陰が過剰になると、疲労感や冷え性が目立ちます。
腎陰虚
テレビCMや雑誌などで紹介されている更年期障害はほとんどが腎陰虚です。
腎陰は臓腑、脳、髄、骨を滋養し、陽に偏るのを防ぎ、発育と生殖を維持します。そのため、腎陰が減る「腎陰虚」になると、陰陽のバランスが崩れ、陽に傾くので、心身に熱性症状が表れます。
腎陰虚の特徴的な症状
- 火照り
- イライラ
- 多汗
- 便が硬い
- 皮膚の痒み
- 足腰の怠さ
- 怒りっぽい
- 頭痛
- 物忘れ
- 眩暈
- 張力の減退
腎陽虚
更年期に入ると腎を活動的にする力も低下します。つまり腎陽が低下する状態となり、これを腎陽虚と呼びます。陽には温める働きもあるため、陽が不足すると冷え性などの症状が目立つことがあります。
腎陽虚の特徴的な症状
- 四肢の冷え
- 浮腫み
- 冷えからくる腰痛
- 疲労感
- 下痢
- 頻尿
- 病後の回復の遅れ
漢方薬とお勧めの食材
腎陰虚
腎陰虚を改善するには、陰を増やし過剰になった陽を抑えることで、陰陽のバランスをとる漢方薬をお勧めします。
代表的な漢方薬には瀉火補腎丸、二至丹、天王補心丹、滋陰降火湯などが挙げられます。
また、肝と腎の働きは密接な関係があるので、上記の漢方薬に加味逍遙散を併用するのも良いでしょう。
具体的には細かい体質を判断したうえで漢方薬を選択する必要があるので、必ず相談しましょう。
腎陰虚にお勧めの食材
- 牡蠣
- シジミ
- アサリ
- 海藻
- のり
- キウイフルーツ
- アワビ
- クラゲ
- イカ
- 貝柱
- ゴマ
- 黒豆
- キャベツ
- ブロッコリー
- ゴボウ
- サツマイモ
- ブドウ
- 栗
- エビ
- ひじき
- トウモロコシ
- ゴーヤー
- キュウリ
- 大根
- トマト
腎陽虚
腎陽虚の場合は、陽を高めることで、陰陽のバランスをとる漢方薬をお勧めします。
また腎陽が弱ると脾(胃腸機能)も低下するので、脾の働きを良くする漢方薬も併せると効果的です。
代表的な漢方薬には八味地黄丸、至宝三鞭丸、参馬補腎丸などが挙げられます。
胃腸虚弱者であれば、健脾散や健胃顆粒、補中益気湯などを併せるとより効果的でしょう。
腎陽虚にお勧めの食材
- 羊肉
- エビ
- 鰻
- ナマコ
- クルミ
- ニラ
- アワビ
- クラゲ
- イカ
- 貝柱
- 豆
- ゴマ
- 小麦
- 山芋
- クルミ
- クコの実
更年期障害はおよそ10年にも及びます。
肉体的な衰えを急激に感じる時期であるとともに精神的な不調から仕事や家庭内での人間関係に悪影響が出てしまう人もいるようです。
更年期障害にも種類があることを忘れてはいけません。
腎陰虚か腎陽虚かを見誤って漢方薬を服用すると効果が期待できないばかりか、症状を悪化させてしまう事もあるので注意が必要です。
漢方薬を服用する際はぜひご相談ください。