過剰なおりものと漢方(帯下病)

おりものとは主に排卵直前に精子の通過を助けるために膣から流出する粘液のことを言います。
古来中国では産婦人科医を『帯下医』と呼ぶこともあり、おりものの状態を通して婦人の健康状態を把握することが重要視されていましたが、現在ではおりものの状態を重要視することも少なくなり、おりものに関する問診をしない専門家も増えてきました。

しかし、おりもの異常は体調不良のサインになる事も多く、女性の健康管理の知識として知っておいた方が良いでしょう。
今回はおりものの異常の中から『脾虚湿盛』『腎虚水湿』『湿熱内蘊』について紹介したいと思います。

漢方におけるおりものの異常の原因

脾虚湿盛

脾虚湿盛とは『脾が弱くなったため、水分代謝が低下し、過剰な水分が体内に溜まっている状態』を指します。
脾とは消化吸収に関わる臓であり、現代の胃腸に近い役割があります。
過剰な水分の摂取や疲労、ストレス過多などにより脾の働きが低下すると水分が停滞し、『白帯』と呼ばれる少し白く濁ったようなおりものが出ます。

脾虚湿盛が起きている人のその他の特徴的な症状として

  • 顔色がくすんだ色もしくは白い
  • 浮腫みやすい
  • 疲労感が強い
  • 食欲不振
  • 下痢もしくは軟便

などが挙げられます。

腎虚水湿

腎虚水湿とは『腎が弱くなったため、水分代謝が低下し、過剰な水分が体内に留まっている状態』を指します。
腎は『人の老化は腎の老化』という言葉もあるほど、老化と深くかかわる臓です。
腎には腎陽と腎陰があり、腎陽が弱ると体の中に寒湿と呼ばれる冷えと過剰な水分が発生します。
腎陰が弱ると、湿熱と呼ばれる熱と過剰な水分が発生します。
そのため、腎虚によるおりもののトラブルは腎陽と腎陰どちらの低下があるのかを把握する必要があります。
腎陽が低下したタイプのおりものは、量が多く水っぽいのが特徴です。
腎陰が低下したタイプのおりものは、量が少なく、黄色っぽいこともあり、臭いが強くなるのが特徴です。

腎陽が低下している人のその他の特徴的な症状として

  • 冷え性
  • 腰痛
  • 眩暈
  • 耳鳴り
  • 物忘れ
  • 活力が湧かない
  • 性欲の低下
  • 尿が薄く多い
  • 頻尿

などが挙げられます。

腎陰が低下している人のその他の特徴的な症状として

  • 火照り
  • イライラ
  • 入眠困難
  • 口の渇き
  • 短気 ・尿の色が濃い

などが挙げられます。

湿熱内蘊

湿熱内蘊とは『体の中に長期的に停滞した水分が熱を帯びた状態』を指します。
他にも細菌感染などにより熱が発生する場合もあります。
お酒を好む、揚げ物を好む、香辛料を好む、などの食生活をされている人に特に多いです。
湿熱内蘊のおりものの特徴は黄色っぽく、粘り気もあり、臭いが強い事です。
特に細菌感染などにより熱の症状が強くなると血が混じり赤色のおりものになる事もあります。

湿熱内蘊が起きている人のその他の特徴的な症状として

  • 下腹部の痛みや違和感
  • 発熱
  • 口の渇き
  • 口臭
  • 便秘
  • 舌の色が赤い

などが挙げられます。

漢方薬とお勧めの生活養生

脾虚湿盛

脾虚湿盛は脾の弱りを改善し水分代謝を高めることが大切です。
そのため、脾の働きを良くする参苓白朮散などが挙げられます。
脾は過剰な水分や冷飲冷食により機能が低下するため、過剰な水分の摂取を控え、温かい飲食を心がけることも大切です。

脾の働きを改善する食材には

  • ニンジン
  • ジャガイモ
  • サツマイモ
  • サトイモ
  • 山芋
  • 舞茸
  • 椎茸
  • 肉類全般
  • 秋刀魚
  • タコ
  • イカ
  • 小麦
  • 生姜
  • 赤身の魚全般
  • アサリ
  • シジミ
  • 牡蠣
  • ひじき
  • ほうれん草
  • 小松菜
  • 玉葱
  • イチゴ
  • ブドウ・棗
  • ライチ

などが挙げられます。

腎虚水湿

腎虚水湿は腎陰・腎陽の弱りを踏まえたうえで改善することが大切です。
腎陽が低下しているようであれば、腎陽を補う漢方薬が良いでしょう。
代表的な漢方薬に八味地黄丸などが挙げられます。
八味地黄丸は比較的ポピュラーな漢方薬ですが、あくまでも腎陰の低下に使うものなので気を付けましょう。
その他にも動物性生薬を含んだ、至宝三鞭丸、参馬補腎丸なども腎陽を補います。

腎陽の低下を改善する食材として

  • 羊肉
  • エビ
  • ナマコ
  • クルミ
  • ニラ
  • アワビ
  • クラゲ
  • イカ
  • 貝柱
  • ゴマ
  • 小麦
  • 山芋
  • クルミ
  • クコの実

などが挙げられます。

腎陰が低下している場合は腎陰を補う漢方薬が良いでしょう。
代表的な漢方薬に知柏地黄丸があります。
知柏地黄丸は六味地黄丸に知母と黄柏が配合された処方です。
腎を補う六味地黄丸に、清熱作用と陰を補う知母・黄柏が入ったことで、陰陽のバランスを整えます。
その他にも腎陰の不足から焦燥感や不眠、不安感が強い場合は清心蓮子飲なども良いでしょう。

腎陰の低下を改善する食材として

  • 牡蠣
  • シジミ
  • アサリ
  • 海藻
  • のり
  • キウイフルーツ
  • アワビ
  • クラゲ
  • イカ
  • 貝柱
  • ゴマ
  • 黒豆
  • キャベツ
  • ブロッコリー
  • ゴボウ
  • サツマイモ
  • ブドウ
  • エビ
  • ひじき
  • トウモロコシ
  • ゴーヤー
  • キュウリ
  • 大根
  • トマト

などが挙げられます。

湿熱内蘊

湿熱内蘊は体の中に停滞した熱と水分を排出することが大切です。
有名な処方として竜胆瀉肝湯が挙げられます。
苦味の強い漢方薬ですが、体の熱と余分な水分を排出します。
しかし、一番意識したいのは飲食の改善です。
お酒、揚げ物、高カロリーな食事、香辛料を避ける事から始めましょう。

まとめ

おりものは人と比べる機会も少ないため、なかなか判断が難しいところもあると思います。
しかし、生理の経血の状態と同様におりものの状態を把握することで女性の健康管理や改善すべき点が発見されるものです。
唯一無二の自分の体なので、ぜひチェックしてみてくださいね。