慢性化蓄膿症と漢方
蓄膿症は中国の古典では「鼻淵(びえん)」と記載されています。
「淵」には「深い」という意味があり、水が澱んで濁る状態をあらわしています。
つまり、鼻淵とは濁った鼻汁が多量にたまる病気、という意味合いがあるのです。
蓄膿症の原因は主に細菌感染による炎症が原因と考えられ、抗生物質により改善することが一般的です。
しかし、漢方や中医学では蓄膿症に「なりやすい体質」があります。
蓄膿症になりやすい体質を改善することは慢性化した蓄膿症のを改善するためにも重要です。
蓄膿症になりやすい体質と改善策をご紹介します。
蓄膿症になりやすい体質
胆腑鬱熱
胆腑鬱熱とは過度なストレスなどが原因で胆に熱がこもる状態です。
強いストレスなどが加わり怒りの感情が強い生活を過ごしていると、気の流れが悪くなります。気は流れが悪くなると熱を帯びる(化熱)性質があり、熱せられた気は上昇します。
すると黄色く粘り気のある鼻汁が出やすくなります。これは鼻と肺が密接な関係にあり、熱せられた気が肺に溜まることが原因と考えられます。
胆腑鬱熱に特徴的な症状
- 気持ちが落ち着かない
- 喉が渇く
- 口の中が苦い
- 舌が赤い
- 舌の苔が黄色
- 怒りっぽい
- 短気
脾胃湿熱
脾胃湿熱とは食べ過ぎや油っこいものの取りすぎ、飲酒などにより消化機能が不調を起こし熱(カロリー)が停滞してしまう事です。これもまた熱を体内に発生させ、肺や鼻に熱をこもらせることになり黄色く濃い鼻水に原因となります。特に鼻の通りが悪くなったり、鼻汁が臭く感じるのも特徴です。
脾胃湿熱に見られる症状に
- 頭重感
- 胃部不快感
- 倦怠感
- 口臭の悪化
脾肺気虚
胆腑鬱熱や脾胃湿熱が『余計なものによる失調』であるとすれば、脾肺気虚は脾肺の弱さからくるトラブルと言えます。脾が弱くなると気を生成することが不十分になり、肺気の不足を招き、いわゆる外邪からの防御力の低下を招きます。肺の働きが悪くなることで、肺とつながりのある鼻に影響が出てしまいます。咳や、くしゃみ、鼻づまりや透明で多量の鼻汁など様々な症状が出やすく風邪もひきやすいです。
脾肺気虚に見られる症状
- 疲労感
- 息切れ
- 顔色に艶がない
- 嗅覚が弱いことがある
- 便通が安定しない
- 肌が乾燥する
- 食欲不振
漢方薬とお勧めの食材
胆腑鬱熱・脾胃湿熱
脾胃湿熱と脾胃湿熱は体の中に溜まった熱を排出し、水の流れを整える漢方薬がお勧めです。
特に鼻淵丸は有名で、鼻の通り良くする蒼耳子を中心に清熱作用のある茜草根などが配合されています。ほかにも麻杏甘石湯と辛夷清肺湯を併用するやり方などもあるので、体調や体質に応じて厳密に選定することが重要です。
ストレス過多が目立つ場合には竜胆瀉肝湯や柴胡清肝湯などを併用するとより効果的です。
胆腑鬱熱・脾胃湿熱にお勧めの食材
- キャベツ
- 玉葱
- 大根
- 山査子
- トマト
- リンゴ
- サクランボ
- レモン
- ニラ
- ネギ
- 玉葱
- レモン
- ミカン
- 梅
- 酢
- アスパラガス
- ブドウ
- グレープフルーツ
熱がこもっている場合は何より過食やアルコール、揚げ物を控えることが大切です。
消化の良い胃腸に負担のかからない食事を腹八分にしましょう。
脾肺気虚
脾肺気虚は気を補いながら水の流れを整える漢方薬がお勧めです。
脾の働きを良くする目的で補中益気湯や六君子湯、玉弊風散などを中心に、症状が酷い時だけ小青竜湯などを併せるのが良いでしょう。
脾肺気虚にお勧めの食材
- ニンジン
- ジャガイモ
- サツマイモ
- サトイモ
- 山芋
- 舞茸
- 椎茸
- 肉類全般
- 鰻
- 鱈
- 鮭
- 秋刀魚
- 鯖
- 鰹
- 鰯
- タコ
- イカ
- 米
- 卵
- 小麦
- 生姜
蓄膿症が慢性化する原因には過度なストレス、暴飲暴食など不摂生からくるものもあれば、内臓の弱りからくるものもあります。
蓄膿症が完治しにくい原因はもしかしたらこれらが原因となっているかもしれません。
今一度自分の体質を振り返り、慢性化した蓄膿症を改善させていきましょう。