採卵に向けて漢方で体質改善

体外受精胚移植法をするうえで、まず大切なことが「質の良い卵子が採卵できるか」です。
ロング法、ショート法、アンタゴニスト法などがありますが、多くは排卵誘発剤を使用します。
排卵誘発剤による刺激法は卵巣を刺激して排卵を誘発させるため、OHSS(卵巣過敏刺激症候群)などになることもあるため、できれば少ない採卵で質の良い卵子が取れること、そして妊娠に至る事が望ましいとも言えます。
中医学では「質の良い卵子を育てる事」に重点を置き様々な検証や研究がなされてきました。
今回は中医学的な「質の良い卵子の育て方」のお話です。

中医学において重要な事(補血 活血 補腎)

中医学において質の良い卵子を育てるには3つのキーワードがあります。

キーワード1 補血(ほけつ)

血は中医学では「けつ」と呼ばれます。血の働きには以下の3つがあります。

  • 全身に栄養を運ぶ
  • 身体を温める
  • 精神を安定させる

特に栄養を運ぶ役割の点からも質の良い豊富な血が卵巣に流れ込むことが、質の良い卵子を育てることにつながると考えています。しかし、多くの女性は生理による出血や偏食、ダイエットなどにより質の良い血が十分ではないことがあります。 血が不足した状態を「血虚」と呼び、以下のような症状が目立つようになります。

  • 経血量が減り気味
  • めまい
  • 立ちくらみ
  • 髪がパサつく
  • 肌の乾燥(肌が弱い)
  • 軽度の不眠
  • 不安感
  • 疲れやすい
  • 顔色が優れない
  • 爪が割れやすい(薄い)

このような症状が気になる場合は血を補う「補血」が必要になってきます。

キーワード2 活血(かっけつ)

質の良い血が重要であることはキーワード①で分かりましたが、それだけでは十分とは言えません。
質の良い血が十分に生殖機能に流れ込むことが大切です。 この働きは輸送トラックに良く似ています。
どんなに栄養を積んだ車(血)も道路(血管)が渋滞していたり、流れが悪かったりすると届けるべき場所まで効率よく届けることができません。
血の質を良くすることと同じくらい血流を良くすることは重要なのです。 血行不良がみられる状態を瘀血(おけつ)と呼び、以下のような症状が目立つようになります。

  • 頭痛
  • 肩こり(揉むとこりこり固いしこりがある)
  • 顔色が良くない(暗い)
  • 経血に塊が出る
  • 経血が暗い色
  • 生理痛がある
  • 毛細血管が浮き出る
  • しみ、そばかすが多い

このような症状が気になる場合は血流を良くしたり血をサラサラにする「活血」が必要になってきます。

キーワード3 補腎(ほじん)

腎には生殖機能やホルモン系、免疫機能などを含んだ役割があります。
そのため腎虚になると生殖機能そのものが低下し、ホルモンの分泌の低下、免疫機能の低下などを招きます。
「人の老化は腎の老化」という言葉もあるように、人としての老化と腎の老化には密接な関係があるため、腎の働きを高める「補腎薬」は35歳以上の妊活には必須とも言えます。
腎虚は腎陰虚と腎陽虚に分けられるため、厳密にはそのタイプによって特徴も変わってきますが、共通して言えるのは以下の通りです。

  • 腰がだるい
  • 腰に力が入らない
  • 性欲の低下
  • 考える力の低下
  • 髪が細いor抜け毛が気になる

※イスクラ産業HPより引用

血虚体質を改善する漢方薬

血虚体質を改善するには補血薬と呼ばれる漢方薬を服用する事が一般的です。特にセリ科の当帰(とうき)は卵巣機能の向上に高い効果が期待されるため非常に重要な生薬と言えます。
婦宝当帰膠や当帰芍薬散、四物湯、帰脾湯など補血作用のある処方はたくさんあるため、自分の体質に合った処方を選ぶことが重要です。当帰の含有量では婦宝当帰膠が飛びぬけて多いので、妊活における補血薬の第一選択になる事が多いです。

瘀血体質を改善する漢方薬

瘀血を改善するには活血薬と呼ばれる漢方薬を服用するのが一般的です。
活血薬も同様に多くの種類と特徴があるため、専門家に相談のうえで選ぶことが重要です。 また活血薬は強すぎると不正出血などを引き起こすこともありますので、服用する量についても相談する必要があります。
活血薬として有名なところでは、冠元顆粒、桂枝茯苓丸、血府逐瘀丸、独歩丸顆粒、頂調顆粒などあります。 健康食品でも活血を期待できるものもあるため、漢方薬にとらわれない選択も可能です。

腎虚体質を改善する漢方薬

腎虚を改善するには補腎薬と呼ばれる漢方薬を服用する事が一般的です。
補腎薬は多くの種類と特徴があるため、自分の体質に合った処方を選ぶのはなかなか難しいかと思います。
間違った処方を服用するとかえって良くないこともありますので、必ずご相談の上、服用してください。
特に動物系生薬が含まれている漢方薬は胃もたれを起こすこともあるため、消化を助けるハーブティーや胃腸機能を高める漢方薬との併用がお勧めです。

まとめ

「10数個採卵できたのに受精卵がわずかだった。」「採卵したのに良い卵が取れなかった。」そんなご相談をいただく事がございます。体の中を質の良い血が滞りなく流れ、生殖機能がしっかりと機能することは人間としての基本であり、あらゆる高度医療が発達しても人間の基本を無視することはできません。
血虚、瘀血、腎虚の症状が少しでも当てはまる場合はお早めにご相談いただけると幸いです。

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