肝炎
中医学の古典には「肝病者、両脇下痛引少腹、令人善怒」とありますが、両脇と少腹部(下腹部の両側)はともに肝の経絡が走行しているとされる部位で、肝疾患の多くの方はこの部位に痛みを感じることがあります。
また、肝疾患の方に特有な症状として、イライラ、怒りっぽい、気持ちが鬱々とするなどの症状もみられます。中医学では一口の肝炎といっても、それに付随する様々な症状を考慮し大きく4つのタイプにわけて治療を行います。
その4つのタイプとは「肝気鬱結タイプ」・「瘀血内停タイプ」・「肝陰不足タイプ」・「肝胆湿熱タイプ」です。
肝気鬱結タイプ
肝炎の初期に見られる事が多いです。ストレスや運動不足などにより肝を傷めつけ肝気の停滞がおこります。痛みが固定的ではなく背中や両脇、胃のあたりなどあちこちに遊走痛があり、また痛むかと思えばパッと痛みが止んだりします。イライラなどもみられ場合によっては下痢やゲップなどの症状も見られる事が多いです。
対処方法として、気の流れをスムーズにする漢方薬や生活習慣が求められます。
代表的な方剤に逍遥丸があります。もともと「逍遥」という言葉には「気ままに散歩する」という意味合いがあります。気の巡りを良くする疏肝作用と、胃腸の働きを良くする健脾作用、血液を補う補血作用に優れたストレス対策の代表的な方剤です。また、逍遥丸に山梔子・牡丹皮を加えた加味逍遥散も良く使われます。山梔子・牡丹皮は熱を下げる働きがある為、イライラして熱症状が出てる場合はこちらを使う事が多いです。他にも、四逆散の変方の柴胡疏肝散や、開気丸などがありますが、それぞれに特徴があり注意点もありますのでしっかりとご相談のうえ選ぶことをお勧めします。
瘀血内停タイプ
気の巡りが悪くなることにより血の流れは悪くなります。血管の細い部分にある血は滞りやすく、血瘀となりこれがまた気血の流れを悪くするという悪循環になります。肝気鬱結と違うのは、痛みが固定的でチクチクと刺すような痛みがあることです。また、夜になると痛みがつよくなったり、舌の色が紫色っぽくなるなどの特徴も見られる事があります。
対処方法は肝気鬱結タイプと似ていますが、より血の流れを良くする処方を選ぶと良いでしょう。
代表的な方剤に冠元顆粒があります。もともとは狭心症の専門処方でしたが、今では体全体の血行改善に広く使われています。安全な処方で、長期に服用することで肝硬変の予防治療にも役立つとされています。
肝陰不足タイプ
肝気鬱結によって気の巡りが悪くなり、ついで血の巡りが悪くなる、これが長期化すると(肝硬変の段階)、陰血が消耗され肝血虚という状態になってきます。肝は血液を貯蔵する働きもあり、肝の働きが弱くなれば貯蔵する血の量が少なくなり、肝血虚となります。こうなってくると病気は長期化することが多くなります。自覚症状の特徴としては、刺すような痛みというよりはどこかシクシクとした痛みが起きることがあります。喉の渇きや熱っぽさがみられ場合によってはめまいや眼精疲労もみられます。
代表的な方剤として杞菊地黄丸を中心に加味逍遥散などを加えるといいでしょう。食事も辛いものやカロリーの高いもの、油っぽいものはなるべく控えることが大事です。
肝胆湿熱タイプ
舌を見て、苔が厚く黄色くなっていたら要注意です。体の中に湿熱が停滞している可能性が高いです。湿熱はネバネバしているため気の巡りを邪魔することになる。胆汁が異常に分泌され口苦、黄疸といった症状があらわれます。
代表的な方剤として竜胆瀉肝湯があります。湿熱に対応する代表的な方剤であるが長期に使用することはありません。目の充血や、高血圧、頭痛、などのときに使用するとよいでしょう。他にも黄疸治療の代表格として茵陳蒿湯があります。瀉下作用があるので、虚弱体質の人には使いません。
なにはともあれ、肝は体の重要な臓器であるため日頃から、肝炎にならないよう気をつけることが大切です。適度な運動と十分な睡眠、辛いもの脂っこいものはなるべく控えること、漢方薬を予防的に使用するなど手を打ちましょう。





